小学校や中学校の校庭は、子どもたちにとって日常的に体を動かす大切な場所です。運動会や体育の授業だけでなく、休み時間の鬼ごっこやサッカー、放課後のクラブ活動まで、使われ方は多岐にわたります。でも、そんな日常にふと目を向けると、「地面って、けっこう固いよね」と感じたことはないでしょうか。
転んだときの衝撃、砂ぼこりの舞い上がり、雨上がりのぬかるみ。どれも一度は経験のある光景ですが、それが「当たり前」になっている学校環境が多いのも事実です。子どもたちにケガはつきものとはいえ、できることなら少しでもリスクを減らしてあげたい。そんな想いから、校庭の“足元”を見直す動きが少しずつ広がり始めています。
なぜ校庭の地面は固くて砂ぼこりが出やすいのか?
多くの学校で使われているのが、「真砂土(まさど)」と呼ばれる自然由来の素材です。これは山砂をふるいにかけたもので、水はけが比較的よく、整備や補修がしやすいという特徴があります。昔から広く使われてきた理由は、施工コストの安さと作業のしやすさにあります。特別な技術がなくても、定期的な転圧や補充である程度の状態を保てるため、予算の限られた教育現場では現実的な選択肢として支持されてきました。
しかしその反面、乾燥すると細かい砂が舞い上がり、雨が降ればぬかるみ、使えない時間が長引くという課題もあります。運動靴に砂が入り込んだり、教室にまで砂が持ち込まれたりする不快感も、子どもたちや教職員のあいだではよく耳にする話です。さらに、転倒時の衝撃は想像以上に強く、膝や手のひらを擦りむいた経験は多くの人が持っているでしょう。
「昔ながら」の利点はある一方で、時代が進むなかで見過ごせない問題も浮かび上がってきています。少しでも安全で快適な学びの場を整えるには、今ある前提そのものを見直す視点が必要なのかもしれません。
実は進んでいる校庭リニューアルの動きとは?
「校庭は固くて当たり前」という常識に変化が出始めたのは、ここ10年ほどのこと。全国的にはまだ一部ですが、自治体主導で校庭のリニューアルを進める学校が少しずつ増えています。その背景には、児童・生徒の安全確保に加え、熱中症対策や地域開放への対応といった、複合的なニーズがあります。
注目されているのが、ゴムチップ舗装や芝生化といった“柔らかい足元”の導入です。ゴムチップは弾力性があり、転倒時の衝撃を緩和してくれることから、遊具周辺や走り回るエリアへの部分採用が増えています。一方、芝生化は見た目の気持ちよさに加え、地表温度を下げる効果も期待されており、夏場の熱中症リスクを軽減する狙いがあります。
もちろん、維持管理には手間も費用もかかります。芝生であれば定期的な刈り込みや養生、ゴムチップであれば摩耗や浮き上がりへの対応が必要です。けれども、それらを踏まえても、保護者や地域住民からは「安心して遊ばせられる」「転んでも泣かなくなった」という声が多く聞かれるようになりました。
変化は一気には進みませんが、校庭が子どもたちの安全を守る“環境装置”として見直されているのは確かです。安全性と快適性のバランスをどう取るか。そのヒントは、すでに実践を始めている現場の中にあるのかもしれません。
子どもの安全性と運動機能を両立させる地面づくり
校庭の地面には、「安全」と「運動能力の発達」という二つの観点が求められます。たとえば、転倒時のけがを防ぐためには柔らかさが必要ですが、同時にダッシュやジャンプなどの運動がしやすい“適度な硬さ”も必要です。つまり、ただ柔らかければ良いという話ではありません。
運動機能の発達において、子どもは繰り返し転んで学ぶものです。ただ、あまりに衝撃が強いと恐怖心が先に立ち、体を思いきり動かすことが難しくなります。ゴムチップ舗装のような弾力性のある素材は、こうした「動きたい意欲」と「安全性」を両立する環境として注目されています。特に低学年の児童が多く利用するエリアや、鬼ごっこなどスピードの出る遊びが行われる場所での有効性が高いとされています。
また、近年は地面からの反射熱や照り返しが熱中症リスクに影響を与えるという研究もあり、素材の“温度管理機能”にも関心が高まっています。従来の黒っぽいアスファルトは夏場の表面温度が非常に高くなりますが、淡色のゴムチップ材や芝生化によって、気温が高い日でも比較的安全に活動できる環境づくりが進められています。
遊びと学びの場である校庭が、子どもたちにとって「安心して全力を出せる空間」であること。そのために必要なのは、素材の選び方ひとつをとっても、見えにくい現場の配慮と工夫に支えられているのです。
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維持管理の現実と、関係者の本音
どんなに安全で快適な素材でも、日々の維持管理が現場の負担になってしまっては続きません。学校という場は、限られた予算と人手のなかで運営されているため、「現場で扱いやすいかどうか」は非常に重要な判断軸になります。
たとえば芝生は、見た目が美しく裸足でも気持ちいい反面、定期的な芝刈りや散水が必要で、維持費や手間がかかります。また、荒天や長期休暇中に雑草が広がるリスクもあるため、継続的な管理体制が整っていないと、かえって維持が難しくなることもあります。
一方、ゴムチップ舗装はどうでしょうか。初期導入費用は土や真砂土より高くなりますが、定期的な転圧や補充といった手間はほとんどかからず、耐久性も高いため、長期的にはコストメリットを感じるという声もあります。特に教員や校務員の方々からは、「放課後や雨天明けでもすぐに使えるのは助かる」という意見が多く聞かれます。
また、保護者の立場からは「子どもが転んでもケガが軽く済んだ」「砂ぼこりが減って洗濯が楽になった」など、日常の細かい改善が実感として伝わってくるようです。表立っては語られないものの、こうした「使う人の実感」が、導入後の満足度を大きく左右するのかもしれません。
素材を選ぶということは、将来の手間や安心感を見据えた投資とも言えます。その判断には、現場に関わる多くの人たちのリアルな声が、確かな後押しになるはずです。
これからの校庭に必要なのは、柔軟な“足元”の発想かもしれません
校庭という場所は、子どもたちが毎日走り回る、いわば日常の舞台です。転ぶこともあるし、暑さや雨にさらされることもある。だからこそ、ただ「使えればいい」という目線ではなく、そこで過ごす子どもたちの体験そのものに目を向けた素材選びが求められているのだと思います。
昔ながらの土の良さも確かにあります。ただ、それを前提としたまま未来を描くのではなく、時代に合わせて少しずつでも“選び直す”視点を持つことが、今後の校庭整備には大切になっていくのではないでしょうか。
すべてを一気に変えるのは難しくても、まずは一部のエリアや特定の学校から試してみる。ゴムチップ舗装のように、子どもの安全性や日々の管理のしやすさを両立できる素材を選択肢に加えることで、新たな発見や安心感が生まれるかもしれません。
子どもたちが安心して学び、遊び、成長していける校庭を目指して。今ある常識を少し疑ってみるだけでも、次の一歩は始められます。
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